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精神科 くすりのはなし⑮ インチュニブ(グアンファシン)

 インチュニブ(一般名グアンファシン)は注意欠陥多動性障害(ADHD)に保険適用があるお薬です。ADHDの治療薬には以下の3つがあり、精神刺激薬ではコンサータ、非精神刺激薬ではストラテラとインチュニブがあります。

 

 インチュニブには、ADHDのなかでも特に多動性と衝動性に対する効果が期待できるお薬です。インチュニブはもともと血圧を下げるお薬として開発されていた経緯があり、鎮静作用もあります。覚醒状態を鎮静させるためその副作用としては眠気があげられます。夕方に服用して、眠気が日中に残らなければ継続していくことができ、効果も持続します。

 

 

 このような特性があるお薬ですので、衝動性がADHDの症状として目立つ場合に使われる

ことが多いです。不眠傾向が強い場合も選択肢に入ります。18歳以上では1日2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量するのが標準的な「用法・用量」で、症状により適宜増減します。

(CYP3A4/5阻害剤投与中や重度の肝機能障害・腎機能障害がある場合は血中濃度が高まる可能性があるため1日1mgから投与開始)

 

 またインチュニブの急激な減量や中止により、血圧上昇や頻脈があらわれることがあり、海外の報告では高血圧性脳症に至った例もあります。

 そのためインチュニブを休薬する際には、主治医の管理下でゆっくりと段階的に減らすことが重要です。またインチュニブの漸減には1~3週間程度を要するため、他のADHD治療薬で推奨されているような「短期的な休薬」は行わないよう注意喚起されています。

 

 

 

<インチュニブのメリット>

・効果発現が1週間程度で期待できる

・終日途切れることなく効果が持続

・内服は1日1回でよい

・依存性が少ない

 

 

<インチュニブのデメリット>

・ほかの2剤と比較して不注意の改善には向かない

・房室ブロックの患者には禁忌

・眠気やふらつき、失神のリスクがある

 

 

<主な副作用>

傾眠(うとうとする)

血圧低下

徐脈

房室ブロック

頭痛など

 

 

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<参考資料> 以下は細かい作用機序の違いについてに解説です。

 グアンファシン塩酸塩徐放錠(α2Aアドレナリン受容体作動薬:非中枢刺激薬)で、前のふたつとは作用の仕方が大きく異なっています。

 コンサータとストラテラはともにシナプス前(情報伝達物質を放出する側:送信側)のトランスポーター(再取込口)の穴を塞ぐカタチで、情報伝達物質が後シナプスの受容体に届く前に取り込まれてしまうのを防ぐことで、シナプス間の情報伝達物質の濃度を高めて作用します。

 これに対して、インチュニブは後シナプス(情報伝達物質を受け取る側:受信側)のα2Aアドレナリン受容体に結合することでイオンチャネルを閉じて情報伝達物質の漏れを防ぐため、脳内情報伝達効率を高め、機能不全を起こしている脳の状態をよい方向に調整します。

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<参考資料>

注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断基準(DSM-5)

以下のA~Eの項目をすべて満たす。

A.不注意か多動性・衝動性、または両方の症状が見られる

B.不注意、多動性・衝動性の症状は12歳以前から存在

C.症状は特定の場面だけでなく、家庭と学校など2つ以上の状況で見られる

D.症状が社会的、学業的、職業的な機能を明らかに支障している

E.症状は他の精神疾患によるものではない

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不注意とは

・細部に注意が向けられず間違いをよくする。

・課題または遊びの活動で、注意を持続させることが、困難である。

・直接話しかけられた時、聞いていないように見える。

・指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない。

・課題や活動の順序立てることが、困難である。

・学業や宿題のような、精神的努力の持続を要する課題に従事することを避ける、嫌う。

・おもちゃ、学校の宿題、本、道具などの課題や活動に必要なものをなくす。

・外からの刺激によって、容易に注意をそらされる。

・毎日の活動で忘れっぽい。

 

 

多動性とは

・手足をそわそわ動かし、または椅子の上でもじもじする。

・教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。

・不適切な状況で、余計に走り回ったりよじ登ったりする。(落ち着かない)

・静かに遊んだり、余暇活動についたりすることができない。

・じっとしていない、または、まるでエンジンに動かされているように行動する。

 

 

衝動性とは

・質問が終わる前に、出し抜けに答えてしまう。

・順番を待つことが困難である。

・他人を遮ったり、割り込んだりする。(例えば、会話やゲームに干渉する)

 

 

 

 大人のADHDでは、気分障害(うつ病・躁うつ病など)、不安障害(社交不安障害・広場恐怖症など)、強迫性障害、依存症(アルコール・薬物)などの合併が多い傾向にあり、合併症の症状に悩み精神科を受診し、その後の経過でADHDの存在が明らかになるケースも昨今増えています。しかしADHDを疑うような症状があったとしても、ADHDの診断が確定するまでには時間がかかる場合もあります。

 

 職場等での大人の発達障害の疑いがある場合やご本人が仕事や生活に支障を来して悩んでいる場合は一度、精神科への早期の受診をお勧めします。

 

 

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