昨今、ヒマラヤトレッキング、スイスのツアー南米ツアーでの中高年旅行者が増加しています。
そこで、日本旅行医学会認定旅行医が、高山病12のポイントをまとめました。
1.グループツアーのリスク
個人のトレッカーは、自分の体調に合わせて日程をフレキシブルに変更できます。しかしグループ、特にタイトなスケジュールを組む日本のグループツアーでは、リーダーは日程に固執しなければならないうえ、参加者同士が競争意識によりペースを上げたり、グループへの遠慮から身体の不調を隠し、手遅れを招くケースが多くみられます。
2.25歳以下のリスク
若き故のオーバーペース、体力への過信、そして高山病への知識の欠如が多くの日本の若者の命を奪っています。
3.尿の測り方
水分不足は、AMS(山酔い)の発症原因の1つです。
簡易測定法:できるだけ尿をがまんし、膀胱をフルにしてから排尿します。これは約450~500cc。1日2回、最低1,000ccの尿量を確保するよう水分を補給します。尿の色の観察も重要で、濃いムギワラ色は脱水気味のサインです。
4.脱水症状の判断
まず脈の数を立位で数えます。次に横になり、30秒以上してから再び脈を数えます。脈数に20%以上の差があれば、脱水症状と判断します。
5.ガモフバッグの使用
HAPE(高所肺水腫)やHACE(高所脳浮腫)の初期の診断に迷ったとき、1~2時間ガモフバッグを使用します。症状の改善があるかどうかの判定に使用できますが、応急の処置です。最近の日本のツアーでは、ガモフバッグを持参してはいるものの、使用法を知らないリーダーや添乗員がいて問題視されています。
6.夜間の呼吸
寝苦しくなったり、不規則な呼吸はAMSの症状の1つです。呼吸が苦しく目醒めるのは、酸素不足の体への警告です。
7.睡眠薬とアルコールのリスク
睡眠薬:すべての睡眠薬は、2つの理由で使用すべきではありません。脳など重要臓器への酸素不足の警告を抑制してしまいます。HACEの症状をマスクし、病状の判定にミスを招くことがあります。
アルコール:アルコールは睡眠薬同様、夜間の呼吸を抑制し、脳の低酸素を招きます。睡眠薬同様、HACEの早期判定の障害となります。また、アルコールの利尿作用は脱水症状を招き、AMSが悪化する原因となります。
8.アセタゾラミド
日本では、医師の処方薬であり、旅行会社やガイドによる薬の投与は、事故があった時の遺族による訴訟で問題となるのはもちろん、薬事法違反は刑罰の対象となります。一方、ゆとりのない日程により、多くの旅行者が苦しんでいる日本特有のパック旅行では、本来不可欠なAMSの予防薬です。
9.聴診器
HAPEの早期確定診断に必ず持参すべきものの1つです。最近は、パルスオキシメーターが万能であるかのような風潮がありますが、値段効率や有用性では聴診器が優先だと思います。
10.タンデムテスト
昏睡状態になってはじめて、HACEの診断を下した例がほとんどのようです。日本のトレッキングリーダーや旅行会社は、実演を交えたこのタンデムテストなどによる、HACEの早期診断技術を身に着ける必要があります。
11.ニフェジピン
HAPEの緊急予備薬として持参する時は、使い方と副作用についての知識が必要です。医師処方薬であり、医師の裁量下での使用が通常ですが、“緊急避難”としての準備は人命の重さを考慮すれば必須でしょう。
12.ステロイド
安易にAMSの予防薬として用いるべきではない。ステロイドは医師の処方薬です。ニフェジピン同様、HACEの場合の“緊急避難”としての準備は必須でしょう。
当院では高山病予防薬の処方を自費にて行っております。
登山予定のある方や高山病が不安な方は銀座スピンクリニック トラベル外来 旅行外来 登山外来へご相談ください。
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