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産業医コラム コミュニケーションの実践⑥

 メンタルヘルス対策における上司の役割(ラインケア)の一つに、関心をもって部下の花脚に耳を傾ける事(傾聴)があります。この「傾聴」は、相手を認めていることでもあり、コミュニケーション上、最も大切な要素といっても過言ではありません。傾聴がしっかりできる上司には信頼が集まり、チームの求心力も高まることでしょう。

 

悪い例

上司:おかえり!おや、さえない表情だね。

部下:はい、ちょっと。

上司:契約とれなかったのか。いつもいつも、そう調子よくは進まないよ。俺だって若いころは苦労したんだから。何回も、何回も訪問してさ。

部下:はあ。

上司:元気出せよ。めげずに、プッシュ、プッシュだよ。

部下:でも…あの…

上司:(部下の言葉を遮るように)そんなに気にすることはないよ。次があるさ。

部下:はあ…。

 

 これでは、部下の気持ちは晴れないどころか、何の対処法も見いだせないですね。自分の経験や考え方を伝えることはしばらく控え、まずは関心をもって部下の話を聴き、気持ちを受け止めましょう。

 

 

いい例

上司:〇〇君、おかえり!おや、さえない表情だね。

部下:はい。ちょっと。

上司:よかったら話してくれよ。

部下:はい。実は、先月の打ち合わせでは、すぐにも契約が成立しそうだったんですが、急に様子が違ってしまって。

上司:急に様子が違ったって、そりゃ驚いただろう。

部下:そうなんです。それでよくよく聞いてみたら、最近、他者からのアプローチがあって、料金の面で決定せざるを得なかったということでした。

上司:他社からのアプローチか。それは悔しいだろう。君もあれだけ力を入れていたんだから。

部下:はい。がっくりきて力が抜けてしまいました。

上司:そうか、がっくりか。だいぶ堪えたようだね

部下:はい。でも、私もまずかったんです。一か月も空けずに早急に次のアプローチをしていたら、交渉の余地もあったと思うんです。すみません。今後、注意します。

上司:そうだね。今後は気を付けながらやっていこう。何かあったら、いつでも話してくれよ。

 

 上司が話せる雰囲気を作り、促すことによって、部下は素直に話すことができます。関心を抱いて、状況を聴くだけでなく共感的に理解し、部下の気持ちにも寄り添うことで、部下は現実を振り返り、今後の改善策を自ら見つけ出していきます。聴くことには、大きな力があるのです。

 上司自身も、ときには友人や上司に話を聴いてもらって気持ちを整え、リフレッシュしましょう。

 

 

銀座スピンクリニック 

精神科 産業医

 

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